暗号資産の税金は本当に20%になったのか?令和8年度税制改正の分離課税を正しく理解する

今回は、「暗号資産の税金は本当に20%になったのか?令和8年度税制改正の分離課税」について、具体的な計算例を交えてわかりやすく解説します。

この記事はこんな人におすすめ!
- ビットコインやイーサリアムで利益が出たが、これまでの税率が高すぎて売り時を逃していた方
- 令和8年度税制改正で「何がいつから変わるのか」を正確に把握したい方
- DEX(分散型取引所)や海外取引所も使っており、自分の取引が分離課税になるか不安な方
「暗号資産で利益が出たのに、税率が高すぎて売るに売れない」という暗号資産の課税の仕組みに改正が入りました。
令和8年度税制改正でついに分離課税20%が法律として成立し、2026年3月31日に公布・施行されました。
ただし、実際に分離課税が適用されるのは「金融商品取引法等改正法の施行翌年1月1日以後の譲渡」からとなっており、現時点では2028年1月開始が見込まれています。
今すぐ全取引が20%になるわけではないため、この記事を参考にして頂けますと幸いです。
暗号資産の申告分離課税とは?改正の全体像
正式な制度名は「特定暗号資産の譲渡等に係る申告分離課税(措法38の2)」です。
通称として「暗号資産分離課税」と呼ばれています。
改正前は、暗号資産の売却益は雑所得(総合課税)として扱われ、給与所得など他の所得と合算したうえで最高税率55%(所得税45%+住民税10%)が適用されていました。
改正後は、一定の要件を満たす暗号資産の譲渡について、他の所得と切り離して一律20%(所得税15%+住民税5%)で課税されます。
- ポイント:この20%はあくまで「特定暗号資産」を「国内の暗号資産取引業者を通じて売却した場合」に限られます。海外取引所やDEXでの売却は改正後も総合課税のままです。
根拠法令・参考情報:国税庁|暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について
| 項目 | 改正前(現行) | 改正後(分離課税適用後) |
|---|---|---|
| 課税方式 | 総合課税(雑所得) | 申告分離課税(特定暗号資産のみ) |
| 税率 | 最高55%(累進) | 一律20%(所得税15%+住民税5%) |
| 損失の繰越 | 不可 | 3年間の繰越控除が可能(分離課税対象分のみ) |
| 他の金融商品との損益通算 | 不可 | 上場株式等との通算は不可(暗号資産同士のみ) |
| 特定口座・源泉徴収 | なし | なし(自分で申告が必要) |
| 適用開始 | — | 金商法等改正法施行翌年1月1日(2028年1月見込み) |
- 重要:法律(所得税法等の改正法)は2026年3月31日に成立・公布されましたが、分離課税の適用開始は「金融商品取引法等改正法の施行翌年1月1日」と定められています(改正法附則39①)。
金商法改正の施行が令和9年(2027年)中であれば、令和10年(2028年)1月1日から分離課税が始まります。適用開始前の取引は、引き続き総合課税で申告します。
分離課税の適用要件と対象外のケース
要件・適用条件
- 譲渡する暗号資産が「特定暗号資産」であること(金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産)
- 売却先が「暗号資産取引業者(国内登録業者)」であること
- 分離課税の「適用開始日以後」(現時点では2028年1月1日以後見込み)に行った譲渡であること
- 確定申告を自分で行うこと(源泉徴収・特定口座制度は設けられない)
- 注意:「特定暗号資産かどうか」は譲渡時点で判定します。
過去に購入した時点では一般的な暗号資産だったものが、適用開始後に国内取引所で売却すれば分離課税の対象になる可能性があります。
逆に、国内で購入した暗号資産でも、DEXや海外取引所に送って売却した場合は総合課税になります。
対象外のケース(改正後も総合課税のまま)
以下のケースは改正後も総合課税(雑所得または事業所得)のままです。
総合課税
- DEX(分散型取引所)や海外取引所での暗号資産の売却
- 個人間での直接取引(P2P取引)
- マイニング・ステーキング・レンディング報酬など「取得時」に発生する収入
- 暗号資産での物の購入・サービス代金の支払い(みなし譲渡)
- 暗号資産同士の交換(例:BTC→ETHへの交換)でDEX経由の場合
- 注意:国内取引所で保有しているビットコインをDEXへ送金して別の暗号資産と交換すると、その送金・交換の段階で「総合課税の譲渡」が発生したと認定されるリスクがあります。
経路変更の途中で意図しない課税イベントが起きる点は、特に要注意です。
税額計算の全体像
分離課税が適用された場合の税額計算は、次のステップで行います。計算式を以下のボックスで整理します。
総合課税の計算方法
- 譲渡収入金額- 取得費(取得価額 × 売却数量 ÷ 保有数量)- 譲渡費用(取引手数料など)= 譲渡所得等の金額
- 前年以前から繰り越した損失がある場合は控除する
- 課税譲渡所得等の金額 × 20%(所得税15% + 住民税5%)= 納付税額
- 復興特別所得税(所得税額の2.1%)が別途加算されます
「取得費(取得価額)」の計算方法は、総平均法(届出なしの場合のデフォルト)または移動平均法(届出により選択可能)の2種類から選べます。一度選んだ方法は原則として3年間変更できません。また、評価方法は銘柄ごとに選択できます。
総合課税
- 総平均法:1年間に購入した全数量の合計金額 ÷ 合計購入数量 = 1単位あたりの平均取得単価
- 総平均法:1年間に購入した全数量の合計金額 ÷ 合計購入数量 = 1単位あたりの平均取得単価
計算手順(STEP形式)
STEP形式
国内取引所から年間取引報告書を取得する。
各取引所は翌年1月31日までに報告書を発行・提出する義務が課されます(改正後から取引業者による税務署への報告制度が創設)。
譲渡収入金額(売却金額の合計)から取得費と譲渡費用(手数料)を差し引き、「譲渡所得等の金額」を計算する。
前年以前に繰り越した損失がある場合(分離課税適用開始後の損失に限る)は控除する。繰越控除を受けるためには、損失が生じた年分も含め毎年確定申告を行う必要があります(申告が途切れると繰越権利が消滅します)。
課税譲渡所得等の金額に20%(所得税15%+住民税5%)を乗じて税額を算出。
確定申告書第三表(分離課税用)に記入し、翌年2月16日〜3月15日の申告期限までに提出・納付する。
- 注意:株式の特定口座のように「自動で計算して源泉徴収してくれる」仕組みは、暗号資産には設けられません。
損益計算から申告・納税まで、すべて納税者自身が行う必要があります。
取引量が多い方は、専用の損益計算ツール(クリプタクト、Gtax等)の活用を検討してください。
具体的な計算例(2ケース)
以下のケースはいずれも「分離課税適用開始後(2028年1月以降)の取引」を前提として計算しています。
ケースA:国内取引所でBTCを売却して利益が出た場合
前提(例):2028年中にbitFlyerでビットコイン(BTC)1枚を売却。売却単価1,200万円、取得単価(総平均法)400万円、手数料2万円。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| ① 譲渡収入金額(売却額) | 12,000,000円 |
| ② 取得費(平均取得単価×売却数量) | 4,000,000円 |
| ③ 譲渡費用(手数料) | 20,000円 |
| ④ 譲渡所得等の金額(①-②-③) | 7,980,000円 |
| ⑤ 税額(④ × 20%) | 1,596,000円 |
※復興特別所得税:所得税分(④×15%=1,197,000円)の2.1%=25,137円が別途加算されます。
- 改正前(総合課税・税率55%の場合)との比較:同じ利益7,980,000円に55%が適用されると税額は4,389,000円。改正により約2,793,000円の節税効果があります。
ケースB:損失が出た年・その翌年に利益が出た場合(繰越控除の活用)
前提(例):2028年にBTCを国内取引所で売却して500万円の損失が発生。2029年に同じ国内取引所でETHを売却して200万円の利益、BTCで400万円の利益が発生。
| 年分 | 損益 | 繰越損失との通算後 | 税額(20%) |
|---|---|---|---|
| 2028年 | △5,000,000円(損失) | —(申告して繰越) | 0円 |
| 2029年(ETH) | +2,000,000円 | 2029年合計利益6,000,000円 -繰越損失5,000,000円 =課税所得1,000,000円 | 200,000円 |
| 2029年(BTC) | +4,000,000円 |
繰越控除がなければ2029年の税額は6,000,000円×20%=1,200,000円でしたが、2028年の損失500万円を繰り越すことで、税額が1,000,000円(1,200,000円→200,000円)圧縮されます。
- 重要:繰越控除は「分離課税開始後(2028年1月以後)に確定した損失」にのみ適用されます。
2027年以前の損失(改正前の総合課税時代に生じた損失)や、保有中の含み損は繰越控除の対象外です。
また、上場株式ETFなど他の金融商品の損失と暗号資産の利益を相殺することもできません。
必要書類と申告の流れ
必要書類
- 各国内取引所の年間取引報告書(翌年1月31日までに発行)
- 確定申告書Bおよび第三表(分離課税用)
- 暗号資産に係る譲渡所得等の計算書(国税庁のExcelシートを活用)
- 繰越控除を受ける場合:前年分の申告書の控え(繰越損失額の確認用)
- DEX・海外取引所での取引がある場合:取引履歴のCSVエクスポートデータ(別途、総合課税で申告)
申告期限は翌年2月16日〜3月15日(e-Tax利用でも同じ)。
2028年分の取引であれば、2029年2月16日〜3月15日が申告期限になります。
期限後申告では繰越控除が認められない場合があるため、必ず期限内に申告してください。
- 注意:国内取引所での特定暗号資産の取引と、DEX・海外取引所での取引が混在する場合、申告書上での記載箇所が異なります。
国内取引所経由の分離課税分は「第三表」、それ以外の総合課税分は「第一表・第二表」に記載します。
混同して計算すると税額が変わるため、取引経路ごとに損益を別管理することを強くお勧めします。

「分離課税20%」という言葉だけが先行していますが、「どこで売るか」「いつ売るか」によって課税方式がまったく異なります。制度の全体像をきちんと把握してから取引判断をしましょう。
よくある質問(FAQ)
よくある質問
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Q. 改正前(2027年まで)に購入したビットコインを、改正後(2028年以降)に国内取引所で売却した場合、分離課税になりますか?
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なります。「特定暗号資産かどうか」「分離課税の適用開始日以後の譲渡かどうか」は売却時点で判断するためです(改正法附則39①)。
2020年に購入したビットコインであっても、2028年1月以降に国内取引所で売却すれば分離課税20%の対象です。
ただし、取得費は実際に購入した金額(改正前の取得価額)を使います。
-
Q. 国内取引所で購入したビットコインをMetaMaskなどのウォレットへ移してDEXで売却した場合、分離課税になりますか?
-
なりません。分離課税の対象は「暗号資産取引業者(国内登録業者)を通じた譲渡」に限られます。
DEXでの売却は総合課税(雑所得)のままです。
また、国内取引所からウォレットへの出金自体は課税イベントではありませんが、その後DEXで別の暗号資産に交換した場合は「譲渡」が発生し、総合課税の対象となります。
「どこで売るか」が課税方式を決める大原則です。
-
Q. 暗号資産の損失と株式投資の損失を合算して税金を減らすことはできますか?
-
できません。暗号資産の分離課税(措法38の2)と上場株式等の申告分離課税(措法37の11等)は、別々の「分離課税の箱」であり、互いに損益通算できません。
暗号資産の損失は暗号資産同士(特定暗号資産の範囲内)でのみ通算可能です。
逆に、株式の損失と暗号資産の利益を相殺することもできません。
-
Q. マイニングやステーキングで得た報酬も分離課税20%になりますか?
-
なりません。マイニング・ステーキング・レンディング等による報酬は「取得時に収入が発生する」と整理されており、引き続き総合課税(雑所得または事業所得)の対象です。
ただし、その後に当該報酬で得た暗号資産を国内取引所で売却した場合、売却時の利益が「特定暗号資産の譲渡」に該当すれば、分離課税の対象となります。
取得と譲渡の課税区分を分けて理解することが重要です。
-
Q. 2027年中に大きな含み損を抱えています。分離課税前に売って損失を確定し、翌年の利益と相殺できますか?
-
できません。分離課税の繰越控除は「分離課税適用開始後(2028年1月以後)に確定した損失」に限られます。
2027年以前に確定させた損失は旧制度(総合課税)の損失として扱われ、分離課税の利益と相殺することはできません。
2027年以前に損失を確定させても、分離課税の観点からの節税効果はゼロです。
まとめ
- 令和8年度税制改正(2026年3月31日成立)により、「特定暗号資産」を国内取引所で売却した場合の税率が最高55%から一律20%の申告分離課税に引き下げられます。
- 適用開始は「金融商品取引法等改正法の施行翌年1月1日」からであり、現時点では2028年1月1日以後の譲渡が対象です。それ以前の取引は従来どおり総合課税で申告が必要です。
- DEX・海外取引所・個人間取引・マイニング報酬等は改正後も総合課税のまま。「どこで売るか」が課税方式を決める最重要ポイントです。
- 分離課税適用後は3年間の損失繰越控除が認められますが、上場株式等との損益通算は不可。また、特定口座・源泉徴収の仕組みはなく、自分で確定申告が必要です。
- 繰越控除を活用するには損失が出た年も必ず申告することが絶対条件です。申告を怠ると翌年以降の節税機会を永久に失います。

2028年の分離課税開始に向けて、今から準備できることがあります。
①取引経路(国内取引所 vs DEX・海外)の整理、
②評価方法(総平均法 or 移動平均法)の選択と届出確認、
③損益計算ツールの導入
です。「制度が始まってから考えよう」では必ず後手に回ります。
取引量が多い方や複数の取引所・DEXを使っている方は、ぜひ早めにご相談ください。
正しい制度理解が、税負担を最小化する最大の武器になります。
- 相続税評価額の概算を自分で計算する方法は以下で解説しております。
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