相続税の「取得費加算」とは?期限・計算方法・必要書類を具体例でわかりやすく

 今回は、相続税の「取得費加算」を具体例を踏まえて簡単に解説致します。

武田

この記事はこんな人におすすめ!

  • 相続で不動産や株式を取得した方
  • 相続した不動産や株式の売却を検討している方
  • 適用を受けるための要件や書類を確認したい方

相続した土地・建物・株式などを売却するとき、「相続税も払ったのに、売却益にも税金がかかるの?」と不安になる方は多いはずです。

実は一定の要件を満たすと、納付した相続税の一部を取得費に上乗せできる特例があります。

これが相続税の取得費加算(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)です。

この記事では、相続で財産を取得した方向けに「いつまでに売ればいいか」「どう計算するか」「何を準備すべきか」を、土地・建物/株式/取得費不明の3ケースで解説します。

取得費加算の特例とは、相続や遺贈で取得した財産を一定期間内に売却した場合に、 相続税額のうち一定金額を、その財産の取得費に加算できる制度です。

取得費が増えると、譲渡所得(売却益)が減り、結果として譲渡所得にかかる税負担が軽くなります。

  • ポイント:この特例は「譲渡所得」向けの特例です。株式等の譲渡が事業所得・雑所得になるケースには使えません。

No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

取得費加算の特例は、ざっくり言うと「相続税がかかった相続財産を、期限内に利益が出る形で売った」場合に検討できます。

主な要件

要件

  • 相続・遺贈(死因贈与を含む)等で財産を取得していること
  • その取得者に相続税が課税されていること(相続税ゼロなら原則使えません)
  • その財産を、一定期間内に譲渡(売却)していること

期限のイメージ

要件の期限は「相続開始の翌日」から「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日」までです。

相続税の申告期限は原則10か月なので、一般的には“相続開始から約3年10か月以内”が目安になります。

  • 重要:空き家の3,000万円特別控除(被相続人の居住用財産の特例:措法35③)を適用する場合は、原則として取得費加算は使えません(どちらが有利か試算して選択)。

まずは譲渡所得(売却益)の基本式を押さえます。

譲渡所得(基本)

  • 譲渡所得 = 収入金額(売却代金など) −(取得費 + 譲渡費用) −(特別控除があれば控除)

取得費には購入代金だけでなく、購入時の諸税・登記費用・改良費なども入ります。

一方、建物は価値が減るため、取得費は「購入代金等 − 減価償却費相当額」で計算します。

取得費が分からないとき

先祖代々の土地などで取得費が不明な場合は、売却価額の5%を取得費(概算取得費)として計算できる取り扱いがあります。 「資料がない=何もできない」ではないので、必ず試算します。

取得費加算では「あなたが払った相続税」を「売った資産に対応する分だけ」按分します。

実務は、国税庁の相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書を使うのが最短です。

手順

譲渡所得(加算前)を資産ごとに計算(土地・建物は別)

STEP
1

相続税額(その人に課税された相続税)を確認

STEP
2

譲渡した資産の相続税評価額(相続税申告書ベース)を確認

STEP
3

分母となる取得財産等の価額を確認(相続時精算課税や暦年贈与の加算がある場合は要注意)

STEP
4

相続税を按分して取得費に加算する金額を計算

STEP
5

上限チェック:加算額は、その資産の譲渡益を超えられません。譲渡損失なら加算は0。

STEP
6

ケースA:土地・建物を売却(相続税の一部を按分)

前提(例):土地48,000,000円・建物12,000,000円で売却。仲介手数料等2,400,000円。

項目土地建物
売却代金(収入)48,000,00012,000,000
取得費(加算前)15,000,0005,000,000(償却後の例)
譲渡費用(按分)1,920,000480,000
譲渡益(加算前)31,080,0006,520,000
相続税の取得費加算額(按分)3,000,0001,000,000
譲渡益(加算後)28,080,0005,520,000

この例では、取得費加算により譲渡益が合計4,000,000円圧縮されます(=課税ベースが減る)。

ケースB:相続した株式を売却

売却代金10,000,000円
取得費(被相続人の取得費の例)6,500,000円
売却手数料30,000円
譲渡益(加算前)3,470,000円
取得費加算額(按分の例)400,000円
譲渡益(加算後)3,070,000円

相続で取得した株式と同一銘柄をもともと保有している場合でも、期限内の一部売却は相続取得分の譲渡として扱える取扱いがあります(ただし最終判断は申告内容・資料次第)。

ケースC:取得費が不明(概算取得費5%+取得費加算)

売却代金30,000,000円
概算取得費(5%)1,500,000円
譲渡費用900,000円
譲渡益(加算前)27,600,000円
取得費加算額(按分の例)1,600,000円
譲渡益(加算後)26,000,000円
武田

土地だけでなく、家屋や株式にも取得費加算の特例は適用できるので、税金面で損をしないためにも、漏れがないように確定申告してください。

取得費加算を使うには確定申告が必要です。提出物は大きく「譲渡所得の計算書類」と「取得費加算の計算書類」です。

必要書類

  • 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
  • 譲渡所得の内訳書(不動産)または株式等の譲渡所得等の計算明細書
  • 相続税申告書の控え(相続税額・評価額の根拠)
  • 売買契約書、仲介手数料の領収書、取得費資料(ある範囲で)

質問

相続税を払っていない場合でも使えますか?

原則として、取得者に相続税が課税されていることが要件です。相続税がゼロなら、取得費加算は使えないケースが多いです。

建物だけ赤字(譲渡損失)の場合はどうなりますか?

土地と建物は別資産として扱うのが基本です。建物が譲渡損失なら建物分は取得費加算の対象外になり得ます。土地に譲渡益があれば土地分は検討余地があります。

空き家の3,000万円特別控除とどっちが有利?

空き家の3,000万円特別控除(措法35③)を適用する場合、取得費加算は原則使えません。 控除額(最大3,000万円)と取得費加算額(相続税按分)を比較し、どちらを使うべきかは試算が重要です。

  • 取得費加算は「相続税がかかった相続財産」を「期限内」に「利益が出る形で」売ったときに検討できる
  • 計算は“相続税を売却資産に按分する”のがポイント(明細書の利用が近道)
  • 必要書類(明細書・内訳書・相続税申告書控え)をそろえ、期限に遅れないことが最重要
武田

取得費加算の特例を漏れなく適用するために、売却予定の相続財産がある場合は、売却時期を検討するなどし、適用できる制度は最大限に適用してください。

  • 相続税評価額の概算を自分で計算する方法は以下で解説しております。

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